この季節は乾燥が色々な問題を起こしますが、乾燥性皮膚炎(皮脂欠乏性湿疹)もそのひとつです。この季節は誰でも皮膚が乾燥しますが、加齢とともに皮脂の欠乏も進むため、高齢の方ほどかゆみなどの症状に困ることになります。このかゆみへの対策として1月10日米国皮膚科学会(AAD)が11のヒントを紹介しました。
【かゆみを軽減する5つのヒント】
・冷湿布や氷嚢を、痒みのある部位に5-10分または痒みが引くまで当てる
・水痘や帯状疱疹、漆かぶれ、日焼けなど 、水疱形成や滲出がある場合は、オートミールを加えた湯で入浴する
・保湿する。保湿剤は添加物や香料を含まないものを選ぶ
・局所麻酔薬(pramoxine含有製剤)を塗る
・メンソールやカラミンなどの冷却剤を塗る。保湿剤を冷蔵庫で冷やすと、冷却効果が高まる
【かゆみ予防の6つのヒント】
・入浴やシャワーにはぬるめの湯を使い、時間は10分以内にする
・刺激を最少にするため、せっけんやローションは無香料のものを使う。「無香料」と表示していても、刺激になる化学物質を含んでいることがあるので注意
・薬剤の使用は皮膚科医の指示に従う。薬剤を塗ってから、全体の皮膚に保湿剤を塗る
・衣服は木綿製で身体を締めつけない ものを選ぶ
・極端な気温の変化を避ける。家の中では、比較的涼しく適度な湿度のある環境を保つ。冬季に皮膚の乾燥や乾癬を起こしやすい人は、加湿器を使うとよい
・痒みはストレスで増悪するので、ストレスを避ける
といったものですが、簡単に言うと「保湿すること」「皮膚への刺激を少なくすること」「適切な薬剤を用いること」ということです。ただ、かゆみの原因が肝臓の病気などのこともありますのでかゆみが続く場合は相談していただければと思います。
当院では「肛門科」を標榜していることから、「肛門のかゆみ」を訴えて受診される方も多いです。このかゆみに対しても先に書いたヒントは通じるものがあります。当院で指導しているのは
1.絶対に掻かない
2.シャワートイレの水の勢いを強くしない
3.強く拭きすぎない
4.入浴時も洗い過ぎない。洗うときはシャワーで洗い流す程度にするか、洗剤を使うにしても刺激性の少ないものを手であわ立ててそのまま手でやさしく洗う
ということです。肛門は「皮膚」と「粘膜」という要素を持っているので、皮膚よりデリケートです。だから、かゆいからといって乱暴にかかないことはとても大事です。かいてしまうと皮膚のバリアーが壊れてますますかゆみが強くなったり、感染のきっかけになったりすることもあります。そのため、かゆみが強い場合や、寝ている時に無意識にかいてしまう場合などはかゆみ止めの内服を処方する場合もあります。ま た、かゆみの原因を調べることも重要です。痔ろうや便失禁などが背景にあることもあります。そういった場合は軟膏だけでは治りません。あとは診断に合わせて適切な外用薬を使うことになります。
以前はぎょう虫などの寄生虫によるものもありましたが、現在では激減しており、学校健診からも2015年度限りで廃止されています。
皮膚にしても肛門にしてもかゆみはかなりつらい症状なので、かゆみが続く場合はご相談ください。
2017.02.01