最近、新聞の記事でアニサキスによる食中毒が急増しているということを目にしました。アニサキスとは通常魚介類に棲みついている寄生虫のことですが、そのアニサキスの幼虫が寄生している魚などを食べることでヒトが感染し、腹痛などの症状が起きます。アニサキスが人のどの内臓で悪さをするかで症状が異なりますが、ほとんどはアニサキスの幼虫が胃で症状を起こす”胃アニサキス症”になることがほとんどです。
サバ、アジ、イワシ、イカ、サンマなどが感染源になることが多いですがサバが一番多いようです。これらの魚介類の生食後数時間して,激しい上腹部痛,悪心,嘔吐をもって発症するのが胃アニサキス症の特徴です。これはかなり痛いです。なぜ分かるかというと、実は私も一度アニサキスには痛い思いをしました。自分の場合はイカの刺身でしたが、食後8時間後くらいから痛み出しました。その頃はまだ駆け出しの医師だったので、先輩の医師に内視鏡をしてもらいました。自分の胃の粘膜に噛み付いているアニサキスを見るのはかなり衝撃的でした。すぐに道具でつまんで除去してもらいましたが、摘出したアニサキスは2-3cmの糸状の細くて小さいものでした。こんな小さいものがこれほどの痛みの原因になるのかと不思議に思ったものです。時が経って、今では自分が治療する立場になっていますが、海の無い埼玉でも油断できません。
この1年で当院でも2例アニサキスを除去しています。どこでも新鮮な魚介類が食べられるようになった弊害といえるかもしれません。海産魚介類の生食を避けること,あるいは加熱後に食べること(60℃で1分以上)が,確実な感染予防の方法ですが、やはり刺身を食べたいですよね。ちなみに、醤油、わさび、酢がアニサキス症の予防に有効ではないかと期待されていましたが、料理で使う程度の量や濃度,処理の時間では虫体は死にません。シメサバでの報告も多いです。治療法としては、胃アニサキス症では胃内視鏡で胃粘膜に穿入する虫体を見つけ、これを鉗子で摘出することになります。これも鼻からの細い内視鏡でできるようになったため、以前よりは楽に受けられるようになりました。ちなみに、私は今でもイカの刺身やシメサバは大好きです。