院長コラム

2017.08.11

筋肉が溶ける・・・?

最近は週刊誌で「飲んではいけない薬」「やってはいけない手術」というようなタイトルをよく目にするようになりました。私も気になって目を通したりしますが、印象としては「確かにそういうこともあるけれど・・・」という感じです。「~してはいけない」とか「こういう医者に殺される」などとショッキングな文言を並べることで読者の目を引きたいのでしょうが、ことさら物事の負の一面だけをクローズアップしているものが多いように思えます。

たとえば、コレステロールを下げる薬としてよく用いられるスタチンという系統の薬がありますが、この薬には、筋肉細胞が溶ける横紋筋融解症という副作用があります。よく「筋肉が溶ける」と書かれており、内服している人はびっくりすると思います。確かにいったん発症すれば重篤なものですが、そもそも発症する確率は2万人に1人というもので、めったに起こらないものです。それよりもこの薬を内服することで動脈硬化の進行を防ぎ、心筋梗塞や狭心症を防ぐという恩恵にあずかる人の方がずっと多いことが分かっています。薬というものは必ず効果と副作用があるので、内服することのメリットとデメリットを理解した上で飲むべきだと思います。

現在行われている特定健診でも、コレステロールの異常を指摘される人も多いと思いますが、ガイドラインに従えば、その人によって、コレステロールの目標値は異なるので、異常値が出た人がすべてスタチンを内服しなければいけないということはありません。心筋梗塞の既往のある人の悪玉コレステロールの目標値は100mg/dL未満ですが、高血圧・糖尿病・喫煙のリスクが無いような最も心筋梗塞のリスクが低い人の目標値は160mg/dL未満です。また、閉経前の女性は心筋梗塞のリスクが低いことも分かっているので、それらを考慮した上で内服するかどうかを決めるのが良いと思われるので、特定健診を受けて終わりにしないで、きちんとその評価を医師と共にするべきだと思います。もちろん、内服する市内に関わらず、生活習慣の改善が最も大事なことは間違いありません。



最後に週刊誌などに惑わされないようにするために、以下のような特徴がある記事はよくよく吟味して読んでください。



1.くすりや治療の副作用や合併症などのデメリットばかり伝え、メリットについては伝えない

2.まれな重大な副作用でも、その確率を示さず、いつも起きるかのように伝える

3.大規模な研究に基づく論文や多くの医師が参考にする診療ガイドラインではなく、限られた医師の意見や患者の体験談を根拠にしている

4.文言が過激で断定的