今年のインフルエンザ治療薬
インフルエンザの流行が本格的になってきましたが、皆様の体調はいかがでしょうか?
今年も予防接種のワクチンの流通が滞ったため、接種できずにインフルエンザにかかってしまった方もいるかと思います。
悪寒・全身関節痛を伴う発熱が見られた場合はインフルエンザが疑われるので医療機関を受診してください。ただ、インフルエンザを検査で確定するためにはある程度時間がかかるため、夜間に緊急で受診するかは一考してください。夜間の気温の低い時間に外出してさらに体調が悪くなるかもしれませんから。翌朝に受診しても十分に抗インフルエンザ薬の内服に間に合います。抗インフルエンザ薬について、インフルエンザウイルスを減らすと思っている方も多いかもしれませんが、それは誤解です。あくまでもウイルスの増殖を防ぐというものです。もちろん、抗インフルエンザ薬を内服しなくても自然に治癒します。それでも抗インフルエンザ薬を内服することで高熱で苦しむ時間を減らすことは可能です。
特に今年は、1回内服するだけでよい薬の評判が良いようです。去年から発売された薬ですが、今年はマスコミでも大々的に取り上げられていますね。今までは1日2回、5日間内服が必要な薬や1日で済むけれども4回吸入する薬でしたから、それらの良いとこどりの薬みたいなものです。今までの1.5倍くらいの金額にはなりますが、皆さんが希望されるため不足気味になっています。そのため残念ながら処方できない医療機関もあるかもしれませんがほかの薬でも同じ程度の効果がありますからご安心ください。
それでも、かからないのが一番ですから、外出の際はマスクをつけたり、帰宅時には手洗いうがいを忘れずに。
皆さま、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。>>
皆様のおかげで、当院は昨年12月に無事開業3周年を迎えることが出来ました。今後も皆様の健康に貢献するためにスタッフ一同頑張ります。
当院では内視鏡検査に力を入れておりますが、特に胃の内視鏡(俗にいう胃カメラ)は鼻から入れる経鼻内視鏡を行うことで皆様に苦痛を少なく受けてもらえるようにしています。
胃カメラをやっていて思うことは以前に比べて胃潰瘍や胃がんを目にする機会が減っているということです。実際、統計データでもそのことは証明されており、平成26年には平成8年のピーク時の3分の1以下になっています。胃がんについても平成28年には平成8年のピーク時の2分の1程度になっています。この理由として最も考えられるのはピロリ菌の除菌だと思います。胃カメラが普及したことでピロリ菌による慢性胃炎の診断、そして除菌療法が保険適応になったことで除菌が進んだ結果だと思われます。現在は除菌の成功率も改善しており、除菌することで胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発はほぼなくなり、胃がんの発症は3分の1になるといわれています。現在の20歳以下のピロリ菌の感染率は1割以下と言われていますので将来的には日本人は国民病と言われたこれらの胃の病気から卒業できるかもしれません。
しかし逆に増加傾向の逆流性食道炎や機能性ディスペプシア、時折遭遇する胃アニサキス症などまだまだ胃カメラの出番はありそうです。
除菌した方も除菌後胃がんという問題もありますので、やはり定期的に胃カメラを受けることをお勧めします。
本年も皆様にとって健康で素晴らしい1年になることをお祈りいたします。
最近の風疹の流行
風疹(ふうしん)が今年8月ごろから首都圏を中心に急増しています。国立感染症研究所の調べによると、2018年の風疹患者数は、すでに2014~2017年の年間平均の約10.8倍にあたる1884人(2018年11月7日現在)となっており、今後ますます感染が拡大する可能性もあります。
風疹とは、発熱や発疹、リンパ節の腫れなどが主な症状で「はしか」と呼ばれる麻疹とは似ていますが、症状自体は麻疹よりも軽いため「三日ばしか」ともいわれています。好発年齢は5~14歳で、もともと子供の病気なのですが現在の感染者の半分以上は、「30~50代の男性」です。これはこの疾患の唯一の予防方法である予防接種と関係があります。
風疹ワクチンは生涯で2回のワクチン接種が必要です。(風疹ワクチンを1回接種した人に免疫ができる割合は約95%、2回接種した人に免疫ができる割合は約99%と考えられています)。上記の表のように風しんワクチンは年代および性別によって接種回数が異なるため、特に30-50代(特に男性)は接種回数が不足している可能性が高いです。こうした理由により、風疹はワクチンで予防可能な感染症であるにもかかわらず、いまだ感染者があとを絶ちません。
風疹が問題になるのは「先天性風疹症候群」があるからです。妊娠20週頃までの妊婦が風疹にかかった場合、出生児が感音性難聴、先天性白内障または緑内障、先天性心疾患(動脈管開存症、肺動脈狭窄、心室中隔欠損、心房中隔欠損など)などの障害を持って生まれてくることを指し、発症する確立は妊娠1ヶ月で風疹にかかった場合50%以上、妊娠2ヶ月の場合は35%などとされています。
ワクチンを接種していない30~50代の男性をはじめとした風疹患者が感染源となり、妊婦や胎児に風疹が感染してしまう危険性が高いことから、2018年10月23日、ついにアメリカCDCは風疹免疫を持たない妊婦の日本への渡航自粛を発表しました。
妊娠中の女性は予防接種が受けられないため、特に流行地域においては、抗体を持たない又は抗体価の低い妊婦は、風疹が発生している地域では、可能な限り不要不急の外出を避けていただき、やむを得ず外出をする際には可能な限り人混みを避けていただくなど、風疹にかからないように注意してください。また、妊婦の周りにいる人(妊婦の夫、子ども、その他の同居家族等)は、風疹に感染しないように予防に努めて下さい。
風疹は一度かかると、多くの場合、生涯かかることはないと言われています。しかし、子どもの頃に感染した記憶があっても「はしか」や「リンゴ病」などを風疹だと勘違いしていたということも少なくありません。抗体のつきにくい方もいるので一度罹患したからと言って、免疫があるとは限りません。たとえあなたがこれまで予防接種をうけていたとしても、または風疹にかかっていたとしても、再度予防接種をうけることによる特別な副反応がおこることはありません。そのため感染予防の観点から、今回あらためて予防接種を行うことは全く問題ありません。しかしながら現在風疹ワクチンの流通量が減っていますので、妊娠の可能性がある女性やそのパートナーの男性はまずは抗体価を測定することをお勧めします。妊娠を希望される女性やその配偶者、低抗体価の妊婦の配偶者は、県やさいたま市、川越市、越谷市及び川口市が実施する「風しん抗体検査」を受けることで、ご自身に風疹の発症や重症化を予防できる免疫があるか確認することができます。
当院でも実施しておりますのでご相談ください。
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イグ・ノーベル賞と大腸内視鏡検査
現在、特定健診や各種ガン検診が行われています。精密検査を受けるような指導を受けている方も多いかと思います。早期発見早期治療のためには検診は非常に重要です。
国立がん研究センターが2014年に新たにガンと診断された患者数を14日発表し、患者数は前年から約5000人増え、過去最多の86万7408人だった。部位別では大腸が胃を上回って2年ぶりに最多となりました。
男性 | 女性 | 計 | |
---|---|---|---|
1位 | 胃 | 乳房 | 大腸(13万4000人) |
2位 | 肺 | 大腸 | 胃(12万6000人) |
3位 | 大腸 | 胃 | 肺(11万2000人) |
4位 | 前立腺 | 肺 | 乳房(7万6000人) |
5位 | 肝臓 | 子宮 | 前立腺(7万3000人) |
胃がんが減っているのはやはりピロリ菌の影響があると思います。衛生状態が良くなりピロリ菌に感染する機会が減ったこと、そしてピロリ菌感染者に対する除菌の効果だと思われます。
大腸がんが増えたことは、かねてから生活習慣の欧米化による影響が言われていますが、アメリカでは大腸がん患者が減っているのに対し日本で増えているということを考えると他にも理由があるようにも思います。ただ、患者数は増えているものの早期大腸がん患者の治療効果は高く、早期がんであれば5年生存率は90%を超えています。ということは大腸内視鏡による早期発見が進んできたために患者数は増えているもののしっかり治療ができているといえるかもしれません。実際当院でも大腸内視鏡で発見し、その場で切除し治療が終了という早期大腸がんの方もいらっしゃいます。
大腸内視鏡検査といえば日本人医師がイグ・ノーベル賞を受賞しましたが、その受賞理由が座ったままで大腸に内視鏡を挿入して検査するという新しい方法を発見し、自らにその方法を試したというものでした。今までの方法と異なり座って行うというのも驚きましたが、自ら検査するということにさらに驚きました。私は自分では自分の大腸の検査行うことはやったこともないし考えたこともありませんでした。この賞を受賞したことでこの先生が在籍する長野の病院では検査を希望する患者さんが殺到しているそうです。
現在ではこの先生が行っている方法は少量の鎮静剤を使うというごく普通の方法です。この先生の趣旨も苦痛なく検査を行い、可及的にポリープを切除しがんを予防するというもので、これは私も同感です。ポリープ切除を行う方法もcold snare polypectomyという方法で電気を通電せずにポリープを切除するというもので、切除に伴う合併症を減らす目的で用いるものですが、これも当院で用いているものと同様です。いずれにしても、今回のイグ・ノーベル賞がきっかけで一人でも多くの方が大腸内視鏡検査を受けてみようと思っていただき、近隣の医療機関を受診していただければ幸いです。
「熱中症」
8月になっても猛暑の勢いは続いていますが皆さんはいかがお過ごしでしょうか。どこでも言われていることですが、やはり一番注意するのは熱中症です。なぜなら、適切に対応することで予防できるからです。逆に対応がうまくいかないと死に繋がる病気でもあるので軽視はできません。本邦の年間発症数は約40万人、そのうち8.7%(約3万5,000人)が入院、0.13%(約520名)が死亡しています。また、死亡者数の内、65歳以上が79約8割を占めます。毎年この数字には大きく変化はありませんが、猛暑の今年は熱中症患者が増加することが予想されます。熱中症と聞くと炎天下の中、スポーツや仕事をしている最中に引き起こされる印象が強く、若年男性のスポーツ、中壮年男性の労働(建設業、製造業、運送業、とくに日給制のような短い雇用期間の方)が典型的です。これとは別に独居の高齢者が自宅で発生することが多い『非労作性熱中症』があります。独居のため、発見が遅れたり、また心疾患などの基礎疾患があるため、重症化することがあり、心不全や腎不全などの臓器不全に陥ってしまします。発症した場合は、速やかに治療する必要があります。原則としては「安静」「環境改善」「塩分+水分の補給」が必要です。高齢者がぐったりしている、十分な飲水が困難な場合には、点滴が必要になります。明らかに部屋が暑かった、当日の朝までは普段どおりであったなどの情報が分かれば、環境によるものと思われますが、数日前から体調の変化があったため水分・塩分を摂取することができずに発生した可能性があるので感染症や基礎疾患の増悪がないか鑑別する必要ががあります。そういう意味では高齢者の熱中症と思われる状態でも若い人を診る時とは別の心構えが必要になります。
いずれにしても予防できる病気なので
- ▶クーラーを使った室温と湿度の管理
- ▶適切な食事とともに十分な水分の摂取
- ▶睡眠を含めた十分な休養
- ▶基礎疾患の管理
が重要ですが、体調の変化に気付きにくいのも高齢者の特徴なので変化を感じたご家族の方は医療機関の受診を勧めてください。
スギ花粉症に対する「舌下免疫療法」
皆さんは花粉症をお持ちでしょうか?アンケートでは日本人の4割には何らかの花粉症があるといわれています。その中でも圧倒的に多いのがスギ花粉に対する花粉症で7割を超えているといわれています。スギとヒノキの花粉症は合併することも多いため6月になってようやく症状が落ち着いた方も多いと思われます。
この度、毎年花粉症の季節に鼻や眼の症状で困っている方にひとつの朗報があります。それは、今回アレルゲン免疫療法と呼ばれる治療の薬剤の1つが発売されます。アレルゲン免疫療法とは、アレルギー疾患の原因であるアレルゲン(今回で言えばスギ花粉の成分)を少量から投与することで体をアレルゲンに慣らし、アレルギー症状を治したり、長期にわたって症状をおさえる可能性のある治療法のことです。今までも液体を舌の下に滴下する薬剤はありましたが、今回発売となった薬剤は、舌の下に置く錠剤タイプの薬剤です。日本国内で初めて成人および小児などにおいて使用可能となった速溶性の舌下錠で、既に販売している液状タイプの薬剤よりも高力価の製剤であり、室温保存可能で、服薬のしやすさや利便性などを高めたことが特徴です。当院の患者さんで5月ごろから舌下免疫療法を希望されている患者さんもいらっしゃいましたが、服薬のしやすさを考えて今回の発売を待ってもらっています。スギ花粉舌下免疫療法の開始時期は決まり事があり毎年6/1〜11/30です。安全性に問題があるためそれ以外の時期の初回投与は行えません。花粉症を根本的に治療したい方はぜひご相談ください。この治療は、毎日行うこと、最低2年は続けることが必要ですが、そこまで続けなくても数ヶ月で効果が現れる方も多いです。大きな副作用はなく、口や喉の違和感などの軽度の副作用はありますが概して安全に行える治療法なので安心してください。またダニアレルギーに対しての舌下免疫療法も行っておりますのでそちらもご希望の方は相談してください。
鉄人と大腸がん
先日、元広島カープの衣笠祥雄さんがお亡くなりになりました。71歳でした。鉄人と呼ばれ、国民栄誉賞まで受賞された方がこのような年齢で亡くなったことに大変驚きました。と同時に、上行結腸がんという病名を聞いてさらにびっくりしました。
大腸がんは、最近では早期に発見できれば治癒する確率が高い病気であり、消化器を専門にしているものとしては、大腸がんは定期的検査で防げると考えているからです。防げる病気で不幸にも亡くなってしまったことを考えると、大変残念に思います。
なぜ防げなかったのか、なぜ早期に発見できなかったのか?これには上行結腸がんという、がんのできた場所が関係しているかもしれません。上行結腸とは、下の図の様に体の右側にある大腸を指しますが、この、右か左、大腸のどちらにがんができるかでその後の予後が変わってくることが最近注目されています。過去の大規模臨床試験における右側と左側で予後を比較した研究が2016年のASCOという世界的に大きな学会で、左側の方が生存期間が長かった、と報告されました。大腸の左右とは、単純に体の中心で分けるのではなく、発生学的な違いで分けられており、下の図の様に分けられます。
大腸がんでは発生する部位が右か左かで予後が変わります。『大腸がん検診ガイドライン・ガイドブック』によると、大腸がんの部位別発生頻度は右側26%、左側74%と、左側でかなり高く、さらに細かく言うと、直腸約35%、S状結腸約34%と、上行結腸11%、横行結腸9%、盲腸6%次いで下行結腸5%となっており、直腸S状結腸に圧倒的に多く発生します。
つまり、大腸がんが多く発生するのは左側なのに、予後に関しては右側の方が悪いということになります。この予後の違いにの原因の一つに右側、左側での発見のしやすさの差が影響している可能性が考えられています。
左側では腸内で便が固まっているため、便が細くなる、明らかな血便、腹痛などを起こしやすく、進行してくると腸が狭くなり腸閉塞を起こしやすいという特徴があるからです。そのためにご本人も気づきやすい傾向があります。しかし、右側では便がまだ固まっておらず、症状が出にくいため発見が遅れがちになりやすいということになります。
現在では更に研究が進み、右側のがんの細胞の遺伝子には予後不良因子となる変異が多くみられたり、抗がん剤の効果も左右で異なるということも分かってきました。そのため、今後は左右の違いで用いる抗がん剤の種類も異なってくるかもしれません。
ただ、左右いずれにしても、抗がん剤を使わなければならないような進行がんになる前にきちんと検査して早期に発見すれば問題はありません。症状が無くてもきちんと検査を受けましょう。何と言っても大腸内視鏡検査がベストです。
最後になりましたが、心より鉄人のご冥福をお祈りいたします。今回のことで少しでも大腸がんの予防について皆さんが考えるようになればと思います。
今さら新しい抗インフルエンザ薬
今年は多くの方がインフルエンザにかかったことと思います。シーズン最初にはワクチン不足から始まり、例年になく早期からB型が流行し“隠れインフルエンザ”という言葉もテレビで見られるようになりました。インフルエンザ薬の治療を受けた方も多いかと思いますが、タミフル、リレンザ、イナビルのいずれかを処方されたかと思います。それぞれに一長一短がありますが、まとめるとこんな感じです。
血圧測定(診察室血圧)
投与方法 | 回数 | 長所 | 短所 | |
---|---|---|---|---|
タミフル | 内服 | 1日2回 5日間 |
確実に投与できる 肺炎にも投与可能 |
異常行動の恐れあり、 10代には使えない |
リレンザ | 吸入 | 1日2回 5日間 |
5歳以上から吸入可能 イナビルより効果高い? |
うまく吸入できなければ 効果低い肺炎には使えない |
イナビル | 吸入 | 1回のみ | 1回のみのため コンプライアンス良好 |
うまく吸入できなければ 効果低い肺炎には使えない |
ラピアクタ | 点滴 | 1回のみ | 内服・吸入できない ときでも使える |
医療施設でしか 行えない |
当院でも、1日1回ということを重要視してイナビルの吸入薬を処方することが多かったです。その場で吸入してもらえれば、その後の内服・吸入忘れの心配がないことから救急病院でも処方されることも多いと思われます。
ところが、今回、1階内服するだけでよいというインフルエンザ薬が発売されました。”ゾフルーザ”という薬ですが、もう今シーズンのピークは終わりというこんなタイミングで出てきました。
確かに1日1回内服のみなので確実、吸入が難しいという年配の方でも心配なく、また、今までの薬と作用機序が異なるので、タミフル耐性が心配されていたウイルスに対しても効果がありそうです。また、今までの薬は発症してから48時間以内の投与開始が原則でしたが、この”ゾフルーザ”は速やかに治療開始するべきですが、時間が経っても効果があるかもしれないとも言われています。これだけメリットがあると、当院でも、内服希望の方はこちらを処方するかな…という印象ですが、なぜいまさら、この時期に、来シーズンに発売でもいいのでは・・・?という印象はぬぐえません。
インフルエンザのピークは過ぎましたが、これだけ気温の差が激しいと風邪もまだまだ引きやすいので、まずは予防が大事です。やはり風邪予防には、
1. 手洗い
流水と石鹸で洗うことが基本ですが、その後の感想も大事です。理想はペーパータオルでふき取ることですがきれいなハンカチでも大丈夫です。アルコールを含む手指消毒液も有効です。
2. ワクチン接種
100%効果のあるワクチンはなく、また、ワクチンのないウイルスや細菌もあります。それでも、やはり少しでも感染のリスクを減らすという意味では有効ですし、呼吸器や循環器などの持病がある方は接種することをお勧めします。今年度の肺炎球菌ワクチンの予防接種も始まっていますので、対象の方は受けられることをお勧めします。
3. 咳エチケット
風邪を引いた方はマスクをしましょう。咳やくしゃみが飛び散ることが感染を広げます。マスクではウイルスは100%遮断できないので、マスクをしていても咳やくしゃみをするときは他人に顔を向けないようにしましょう。時折街中でも、N95マスクというごっついマスクをされている方もいらっしゃいますが、これは空気感染を防ぐ特殊なマスクなので日常生活では必要ありません。何より苦しいですし。
4. うがい
うがいに関してはあまり科学的な有効性を示すデータがありません。しないよりはした方がいいかなという程度です。特にうがい薬は逆効果というデータもあるため、水道水で十分だと思われます。
追加ですが、ウイルス性の感染症には抗生剤は効果がないばかりか、副作用が出ることもありお勧めしません。特に最近は耐性菌(抗生剤が効かない細菌)が問題になっていることもあり、抗生剤の乱用は慎むべきです。今回の診療報酬改正でも小児の風邪や下痢には抗生剤が不要であることを適切に説明することが勧められているくらいです。もちろん、大人でも効果がない薬を飲む必要がないと思いますし、私も不要な抗生剤は処方しないようにしています。
胃がんは防げる
21歳のタレントさんの胃がんの記事をネットで見て、消化器を学んでいるものとして大変心苦しく思いました。まずはお元気になられることをお祈りいたします。
皆さんもまずはその年齢に驚いたと思います。日本は胃癌が多く“胃癌大国“と言われているのはご存知の通りです。といっても、胃がんは50-60代に多い疾患であり、やはり若い人には少ない傾向があります。ただし40代以下の人にも見られることがあります。その際は遺伝性ということもあると思いますが、やはりピロリ菌感染が関連している可能性が高いと思われます。今の20代の方のピロリ菌の感染率は約10数パーセントであり、10代以下であれば10%以下と考えられています。年代が若くなるにつれ、衛生環境がよくなり井戸水など飲まないという環境で育ったためと思われています。
では、どこからピロリ菌が来て感染したかというと家族、特にお母さんからの濃厚接触(離乳食の口移しなど)の可能性を指摘されています。なので、ピロリ菌を指摘された方でお子さんがいらっしゃる方は是非お子様のピロリ菌の有無を調べてください。20歳までに除菌できれば発がんのリスクは未感染者とほぼ同様と言われており、感染期間が短いほど発がんの可能性も低いと言われています。ピロリ菌の有無は血液でも調べることができます。ぜひご相談ください。
逆にお母さんからピロリ菌が感染した可能性も考えると、その方のお母さんの胃の検査もするべきだと思います。 当院でも、実際にピロリ菌を指摘された方に対し、その方のお子さんやお母さんの感染の可能性のお話をし、検査をおすすめしております。その検査でピロリ菌感染が分かった10代の方もいらっしゃいます。
胃がんは防げる可能性があるがんです。ピロリ菌の除菌、禁煙、過度の飲酒をしない、塩分を減らす、これらのことで胃がんは減らせます。また、ピロリ菌を除菌した方は、それで終わりにせずにその後も定期的に内視鏡検査を受けてください。除菌することで胃がんの発生率は1/3に減らせると言われていますがゼロにはならないことに注意してください。
皆さんとの協力で日本から胃癌がなくなることを信じている医師も多いと思いますし、私もその一人です。皆さんも是非検査を受けてください。バリウム検診でもいいですが、やはり何と言っても内視鏡検査です。